2022年6月号(自分にあった矯正とは?/お子様の矯正方法プレオルソについて)
自分に合った矯正治療ってどんなもの? 矯正方法のすべて
「小さい頃から出っ歯がコンプレックスで・・・」
「歯と歯のすき間が開いているので治したい・・・」
「矯正をしたいけど、装置が目立ってしまいそう・・・」
このような「歯並びの悩み」をお持ちの方は少なくありません。しかし、矯正治療をいざ受けようにも、「どんな種類、どんな方法で治療を行うのかが分からず、不安」という方が多いのも事実です。そこで今回は、矯正歯科で行っている4種類の矯正治療をすべてご紹介します。さまざまな種類の矯正治療の中からどれが「自分自身に合った矯正治療」なのかを検討してみましょう。
■矯正治療の方式は 4種類に分けられます
現在、歯科医院で行っている矯正治療は大きく「4種類」の方式に分けられます。
1つ目は矯正装置のワイヤーとブラケットを歯の表側に取り付ける「表側矯正」
2つ目は矯正装置のワイヤーとブラケットを歯の裏側に取り付ける「裏側矯正」
3つ目は表側矯正と裏側矯正をミックスした「ハーフリンガル矯正」
4つ目は透明で目立ちにくいマウスピースを使用する「マウスピース矯正」
矯正治療では上記の4種類(表側矯正はここからさらに3つのバリエーションが存在しています)の治療方式の中から患者様がご自分に合っている方式を選んでいただき、歯科医師と相談をした後に本格的に治療を始める流れとなります。
■矯正治療の種類一覧
「金属ブラケット」を歯の表側に装着する表側矯正(矯正治療の基本方式)
表側矯正は矯正治療の基本となる治療方式であり、多くの方が「矯正治療」と聞いて連想するのがこの表側矯正です。表側矯正では、金属で出来ているワイヤーとブラケットという金具を患者様の歯の表側の部分に装着して治療を行います。
○メリット
・金属で出来ているブラケットとワイヤーを取り付けるため歯を動かす力が強く、
さまざまな歯並びの症状に適応する事が出来ます。
・その他の矯正方式と比べて治療費用が安く、矯正治療にかかる費用をおさえる事が可能となります。
⦿デメリット
・金属製で銀色のブラケットとワイヤーを歯の表側に取り付けるため、
矯正装置が目立ってしまいます。
「審美ブラケット&ホワイトワイヤー」を装着する表側矯正(目立ちにくい表側矯正)
歯の表側に目立ちにくい白色のブラケットとワイヤー(ホワイトワイヤー)を装着する表側矯正です。通常の金属製のブラケットとワイヤーを取り付ける表側矯正よりも矯正装置が目立ちにくい、という特徴があります。
○メリット
・通常の表側矯正よりも目立ちにくいです。
・金属ブラケットと同じようにさまざまな歯並びの症状に適応出来ます。
・金属製ではないため、金属アレルギーがある方でも治療可能です。
⦿デメリット
・金属ブラケットを使う通常の表側矯正よりも治療費用が少し高くなります。
・通常の金属ブラケットと比べると強度に劣るため、歯並びによっては適応出来ないケースもあります
「セルフライゲーションブラケット」を装着する表側矯正(痛みの少ない表側矯正)
セルフライゲーションブラケットと呼ばれる、従来の表側矯正で使う金属ブラケットよりも歯にかかる摩擦を軽減した矯正装置を用いて行う表側矯正です。
○メリット
・従来の金属製のワイヤーとブラケットよりも摩擦が少なく、矯正治療中の痛みが軽減されます。
・通常の表側矯正よりも効率的に歯を動かす事が可能なため、通院回数が減ります。
⦿デメリット
・通常の表側矯正よりも費用が少し高くなります。
・矯正装置が通常の表側矯正で使われる装置よりも大きく、目立ちます。
金属ブラケットを「歯の裏側」に装着する裏側矯正(裏側矯正)
金属ブラケットを使い、矯正装置を歯の裏側に取り付ける治療方式です。
○メリット
・歯の裏側に矯正装置を取り付けますので、表側矯正よりも目立ちにくくなります。
⦿デメリット
・従来の表側矯正よりも費用は高くなります。
・歯の裏側に矯正装置を取り付けるため、歯磨きがしづらくなり虫歯になるリスクが上がります。
・舌が当たる歯の裏側に矯正器具を取り付けるため、通常の表側矯正と比べて違和感が大きくなります
表側矯正と裏側矯正をミックスした「ハーフリンガル矯正」(表側矯正+裏側矯正)
外から目に付きやすい上あごの歯には裏側矯正、下唇で隠れて目立ちにくい下あごの歯には表側矯正を行う治療方式です。
○メリット
・外から見えやすい上あごの歯は裏側矯正のため目立ちにくく、下あごの歯は普段は下唇によって
隠れていますので、表側矯正をしてもそれほど目立ちません。
・下あごの歯は表側矯正となるため舌が矯正装置に触れることがなくなり、違和感も比較的少なく
発音も楽に出来ます。
・通常の裏側矯正よりも治療費用は安くなります。
⦿デメリット
・金属ブラケットを使う通常の表側矯正と比べると治療費用は高くなります。
・日本国内ではハーフリンガル矯正治療を行うことが出来る歯科医院の数はまだまだ少ないのが現状です
透明なマウスピースを装着する「マウスピース矯正」
一般的な矯正治療で使われるブラケットやワイヤーではなく、透明で薄型のマウスピースを使用する矯正治療です。
○メリット
・透明なマウスピースを使いますので、金属製のブラケットやワイヤーを用いる表側矯正と比べると ほとんど目立ちません。
・食事や歯磨きをする時には患者様がご自分でマウスピースを取り外せます。
・ブラケットやワイヤーを装着しませんので、違和感は少なく声も出しやすくなります。
⦿デメリット
・金属製のブラケットとワイヤーを使う一般的な矯正治療よりも歯を動かす力が弱く、
適応出来る歯並びの症例が限定されます。
・睡眠中にマウスピースを外してしまうなど、決められた装着時間を守らなかった場合、
矯正効果が出なくなることがあります。
【ご自分に合った矯正治療を行いましょう】
「歯科医院で行っている矯正治療の種類」についてご紹介をさせていただきました。上記のように、矯正治療は「歯を動かす力が強い表側矯正」や「目立ちにくい裏側矯正」、「違和感が少ないマウスピース矯正」など、どの治療方式にもそれぞれにメリットとデメリットが存在しています。
歯並びの症状は患者様によってそれぞれ異なりますが、「どのような矯正治療が本当に自分自身に合っているのか」を見極め、ご自分に合った治療を受けることが大切です。もし、「歯並びが悪くて困っている」というお悩みがあったり、「種類が多くてどれを選べば良いのか分からない」等、矯正治療を受けるかどうかで迷われているのであれば、ぜひ一度、専門的に矯正治療を行っている歯科医院で診察をお受けになることをおすすめします。
プレオルソとは?こども歯並び矯正法
「うちの子の歯並び、少しゆがんでいるかも・・・」
「でも矯正は器具がギラギラして、子どもが嫌がりそう・・・」
「それに矯正治療は痛みを感じるって言うし・・・」
このように、お子さまの歯並びを気にされているご両親は少なくありません。しかし、「矯正は痛い」「費用が高い」といったイメージが先行してしまい、「最初の一歩」を踏み出せずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。こども歯並び矯正法の「プレオルソ」は、マウスピースを利用して矯正を行う新しい治療法であり、上記のような「矯正中に器具が目立ってしまう」というデメリットがなく、現在、お子さまの矯正治療としてプレオルソを選択する方が増えてきています。今回は、こども歯並び矯正法の「プレオルソ」についてご紹介をさせていただきます。
■プレオルソとは
プレオルソはマウスピースを使って行う矯正治療であり、主に「4歳から9歳まで」のお子さまの歯並びを「お口の周りの筋肉を訓練する」ことによって改善してゆきます。プレオルソは、従来の金具を使う本格的な矯正治療(Ⅱ期治療)に入る前の「Ⅰ期治療」として行う治療法で、お子さまの歯並びの乱れが軽度のケースではプレオルソのみで歯並びが改善されることもあります。従来の金具を使った矯正治療が100%の矯正を目指すとすれば、マウスピースを使ってお口の周りの筋肉を訓練するプレオルソは「80%の歯並びとかみ合わせの矯正」を目標としています。
■プレオルソを行う理由
プレオルソはマウスピースを使って矯正を行うため、従来の金具を使用する矯正治療と比べると歯を動かす力自体は弱くなります。しかし、4歳から9歳までのⅠ期治療の時期にプレオルソを行うことによって、約80%の歯並びとかみ合わせを改善する効果を期待出来るほか、プレオルソである程度までお子さまの歯並びを改善しておくことで、本格的な金具を使った矯正治療となるⅡ期治療に移行した場合に矯正にかかる期間を短縮することが出来、全体の治療費用を抑えることが可能となります。
■プレオルソのメリット
◎装着時間が短くて済む
マウスピースを装着するのはお子さまが起きている間の1時間と、就寝中のみでOK。
◎シリコン素材のため、痛みがほとんどない
プレオルソで使用するマウスピースはシリコン素材のため、装着中の痛みがほとんどありません。
◎型取りが不要で治療もスムーズ
プレオルソは既製品のマウスピースを使用しますので、お子さまが一番嫌がる型取りをする必要がなく治療をスムーズに受けることが出来ます。
◎マウスピースの調整が簡単
従来の金具を使う矯正は調整が複雑で時間がかかってしまうというデメリットがあるのですが、プレオルソで使用するマウスピースは熱を加えることによって調整を行うことが可能であり、お湯を使った調整であごの幅を広げるなど、マウスピースをそれぞれのお子さまに合った形に簡単に変えることが出来ます。
◎筋機能訓練により、歯並びとかみ合わせの両方を改善することが出来る
プレオルソは歯並びを治すだけではなく、あごの周りの筋肉を整える「筋機能訓練」も兼ねていますので、お子さまが4歳から9歳までのⅠ期治療の時期にプレオルソを受けることによって「歯並び」と「かみ合わせ」の両方を改善することが出来ます。
■プレオルソで使用するマウスピース
・type-Ⅰ
いわゆる「出っ歯」や「かみ合わせが深くなっている」ケースで使用します。
・type-Ⅱ
「前歯同士がかみ合わない」ケースで使用します。
・type-Ⅲ
下あごが上あごに覆いかぶさってしまう「受け口」のケースで使用します。
■こんな症状のお子さまにプレオルソ治療が適しています
- いつも「ポカン」と口を開けている
- 食事の際に食べ物をこぼしたり、「くちゃくちゃ」と音を立てて食べるクセがある
- 食べ物をよく噛まず、「丸飲み」してしまう
- 話す時に、「舌が口から出てしまっている」
- 寝ている時によく「いびき」をかいている
■費用について
○プレオルソ Ⅰ期治療・・・100,000円(税込み)
○調整料・・・3,240円(税込み)(来院された際に毎回かかります)
○マウスピースの交換・・・20,000円(税込み)(1年ごとの交換が必要となります)
【お子さまの矯正治療はお早めに行うことをおすすめします】
こども歯並び矯正法の「プレオルソ」についてご紹介をさせていただきました。お子さまの歯並びの矯正は早い段階で行うほど矯正の効果が発揮しやすくなるほか、早いうちに治療を受けることで、結果として矯正治療全体にかかる期間を短縮することが出来ます。
よく、お子さまをお持ちのご両親の方で「子どもはどうせ乳歯が抜けて永久歯に生え変わるんだし、矯正は必要ない」とおっしゃる方がいるのですが、それは大きな間違いです。なぜなら、お子さまの矯正治療を「4歳から9歳まで」の早い段階で行う目的は単に歯並びを矯正するためではなく、舌やほっぺた、唇など、「お子さまのお口の周りの筋肉のバランスを整える」ことによって「舌や唇が正しい力を発揮出来るようにする」のが主な目的となるためです。マウスピースを使って行う矯正法の「プレオルソ」は、お子さまのお口周りの筋肉のバランスが整って歯が自然と正しい位置に動くようになり、歯並びも改善されます。
もし現在、お子さまの歯並びのことでお悩みの場合は、ぜひ、矯正治療のご相談を歯科医師にされてみることをおすすめします。
より美しくなるために。矯正治療中のタブーとは?
歯並びを治す矯正治療は歯科医師だけで行うものではなく、治療を成功させるためには「患者様のご協力」が 必要となります。治療中には毎日のブラッシングを基本として、患者様に日ごろから正しいお手入れを実践していただいて初めて「美しい歯並び」を実現出来ます。矯正治療は「患者様がどれだけ治療に協力してくださり、日々のケアをきちんと行っていただくか」にかかっている、と言っても過言ではありません。今回は、より美しい仕上がりを目指すための「気をつけたい矯正治療中のタブー」と、「矯正中のお手入れ」についてお話をさせていただきます。
■矯正治療中に気をつけていただきたいこと
治療中は食べ物の種類に注意
矯正治療中には「食べては(飲んでは)いけない物」は基本的にありません。しかし、「出来るだけ避けていただきたい飲食物」として以下の物があります。
×ガムやキャラメルなど、粘着性のある食べ物
矯正装置に付着して取れなくなる場合がありますので、出来るだけお控えください。
×カレーやキムチ、紅茶やコーヒーなどの色の濃い飲食物
矯正装置や歯が変色するおそれがありますので、出来るだけお控えください。
×おせんべいや飴玉などの硬い食べ物のほか、板チョコや丸ごと1個のりんご等の“一口が
大きくなる”食べ物
矯正装置がはずれてしまったり、装置が壊れてしまうことがあります。大きな口を開けなければ食べられない物は、小さく切ってお召し上がりください。
治療後1週間以内は硬い食べ物は避ける
矯正治療を受けてから1週間以内の時期には、硬い食べ物を噛むと痛みを感じるケースがありますので、お豆腐やヨーグルト、よく煮たうどんなど食事をする際にはやわらかい物を食べることをおすすめします
治療中は矯正装置を舌や手で触りすぎない
矯正治療を行った後には、矯正装置を装着したことにより違和感や痛みを感じるケースがありますが、気になるからといって舌や手で触ってしまうと矯正装置が壊れてしまう原因につながりますので、治療中には矯正装置を舌や手で触りすぎないようにしてください。
■矯正装置のお手入れについて
ブラッシングでいつも清潔な状態を保ちましょう
矯正治療中には、矯正装置と歯の境目に汚れやプラークがたまりやすく、虫歯や歯周病を 引き起こしやすくなります。治療中はどこにいても歯が磨けるように常に歯ブラシを持参していただき、食事の後は必ず歯を磨くようにしてください。また、ブラッシングの際には最初から歯磨き粉をつけて磨くと泡立ってしまい、汚れが落ちたかどうかを確認しにくくなりますので、歯磨き粉はつけずに歯を磨くようにしましょう。「歯磨き粉を使わないとスッキリしない」、という場合には歯磨き粉をつけずにブラッシングをしてしっかりと汚れを落とした後、仕上げに歯磨き粉をつけて軽くブラッシングするようにしてください。
◎ブラッシング時のポイント
1.ブラケットと歯ぐきの間をしっかりと磨く
ブラケットは歯にかかる面積が大きいため、ブラッシングの際には歯ぐきとブラケットの間に汚れやプラークが残りやすくなります。ブラケットと歯ぐきの間は特に気をつけて磨くようにしましょう。
2.ワイヤーの下も磨く
ワイヤーの下に隠れている歯の表面部分は磨きづらい箇所になりますが、汚れやプラークが残りやすいのでしっかりと磨くようにしましょう。
3.色々な種類の歯ブラシのほか、プラウトやフロス、歯間ブラシなども活用する
治療中にブラッシングを行う際には、「矯正装置用の歯ブラシ」や「山型・谷型にカットされた歯ブラシ」を使うことで歯を磨きやすくなります。また、歯と歯の間には汚れやプラークが残りやすいため、ブラッシングの際にはプラウト(タフトブラシ)やフロス、歯間ブラシなどを使って、しっかりと歯の隙間を清掃するようにしましょう
■矯正治療中には定期的に装置の調整と歯の清掃を行います
矯正治療中には、最初に矯正装置を装着した後、患者様に約1ヶ月に1回のペースで歯科医院にご来院していただきます。ご来院時には装置の調整と歯の清掃を行うほか、虫歯や歯周病などの有無を調べるお口全体のチェックも 合わせて行います。ご来院の際には、もし、歯に痛みがあったり装置の不具合がある場合には、ご遠慮せずにその旨を歯科医師にお伝えください。
【矯正中は歯のお手入れを欠かさずに行うことが大切です】
「矯正治療中のタブー」そして「矯正中のお手入れ」についてご説明をさせていただきました。矯正治療は一度装置を装着するとどうしても歯が磨きづらくなり、虫歯や歯周病などの病気にかかりやすくなってしまいます。もしも治療中に重度の虫歯や歯周病を発症してしまった時には矯正器具を外さなくてはならないケースもあり、そのような場合にはいったん矯正治療を中断することもあるため、矯正中は毎日の歯のお手入れを欠かさずに行うことが大切です。矯正は患者様と歯科医師が信頼関係を築き、共に「タッグ」を組むことで初めて成功する歯科治療です。美しい歯並びを手に入れるためにも、患者様にはぜひ、今回ご紹介した「治療中の注意点」と「お手入れの仕方」をご参考にしていただき、歯科医師と共に治療を成功へと導くよう、常に歯の清潔を心がけてゆきましょう。